ふれふり!

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法人の設立と解散について考える その1 設立から解散までの最低費用

 

最近、いわゆる「ひとり社長」の法人、、、個人事業主の「法人成り」とか「マイクロ法人」などと言われるものについて、少し考えてます。

 

家探しをしていて、名刺もないんじゃ困るよな、、、という感じを受けたんですよね。お話をする不動産屋さんはちゃんとした(?)社会人(組織人)だし、売主の人もそういう人が多いので、内見や資金計画の相談などで「お仕事は何をされているんですか?」的な話は出てきて、自分のように所属もなく、何者なのかわからないような人は胡散臭いと思われてしまうわけです。(世間話や出歯亀的な話ではなく、こいつはちゃんと不動産を買う客になる資質、資力があるのか? という値踏みをされているわけです)

まぁ自分はひとりシコシコ作業をしてる個人事業主なのですが、それをなんと説明したらいいか・・・なかなか難しい。なんとなく名前はわかるけど中身がよくわからない仕事という意味では、アフィリエイターとでも自称(詐称?)すれば、ふんわりと「わからないけど了解した」的な受け取り方をしてもらえるのかな。。。

 

とまぁそれはともかく、たとえひとりぼっちのソロもんでも社会との折り合い(体裁的な?)はつけていく必要があり、そのためにも第二人格的な意味合いで法人を持つとどうなるのか、、、まず、ミニマムに運営する場合で設立と廃止にどれくらいコストがかかるか確認してみました。

 

(設立について書いてる人は多いのですが解散まで言及している例がなかったので)

 

ひとり社長で、可能な限り小さい規模で合同会社を設立、廃業まで持っていくという前提で話を進めます。

 

 

設立費用は資本金+登記6万円

自分だけで設立するローコストな法人の形態は「合同会社」一択です。

その場合に法人設立登記費用として法務局に支払う登記手数料(登録免許税)は

・資本金の額×0.7%

・ただし最低額は6万円

となっています。

 

具体的に計算すると

資本金857万円x0.7%=59,990円≒6万円

資本金858万円x0.7%=60,060円≒6万円(100円未満切り捨て)

です。

資金に問題がない場合は858万円にしておけば無駄がないですが、仮に区切りがよいところで1000万円とすれば登録免許税は7万円になります。(1000万円超にしない理由は後述)

 

なお、細かいことを言うとこの857万だの858万だのと言うのは課税標準と呼ばれるもので、実際は資本金の額から1000円未満の端数を切り捨てた額だそうです。つまり資本金858万5999円までは登録免許税は6万円で済むということですね。

 

(計算例)

資本金858万5999円

->課税標準858万5000円

->8,585,000円x0.7%=60,095円≒登録免許税6万円

 

細けぇぇぇ。

 

ということで、どうでもいい話ではあるのですが、こういう具体的な計算をちゃんとできるかどうか(理解しているかどうか)で実務がどれだけできるかどうか変わってくるので、知っておくのも必要だと考えています。

 

1円法人なら6万1円だけど・・・

受託開発や請負職人のように、あまり金融資本を必要とせず、人的資本(自分のウデ)がコアになる会社の場合、資本金を1円にすることもできます。

ただ、仮に資本金が1円でも登記手数料はやはり6万円かかるので、設立に必要な費用は合計60,001円となります。

あとは会社の印鑑の作成や、役所系の証明書取得費(銀行口座を作る場合など)など雑費がいくばくか必要になってきます。

 

ちなみに1円法人ですが、、、実際にチョビっとでも何かしら事業をやるとなると原材料や事務費、雑費などのコストが発生するのと、銀行口座の開設などの際に資本金が1円だとどうなの?みたいな話もあるみたいな(幽霊法人とか、それを利用したマネーロンダリング疑惑などが生じるらしい)ので、ある程度はあったほうがいいように思うんですよね。

経費とかどうでもよくて、とにかく法人の経理をやりたくない、というのであれば1円法人でもいいかもしれませんが。

 

※これ、どういう意味かというと、本当に名刺が欲しいだけで法人の経済的なメリットを一切受けないというスタンスであれば、という話。毎年同じ「ほとんどが空欄orゼロの税申告書をコピペして出し続ける」という作業だけで法人の維持は可能なんじゃね?という・・・(たとえば何も活動せず、給与も払わず、何一つ経費にせず、後述の税金はポケットマネーで支払う、みたいなことになる)

これはかなり荒唐無稽な話で、実際に実行している人はいなさそうだけど・・・

 

法人の印鑑など2~5千円くらい?

前述の雑費のうち、印鑑について。

これはお役所に出す書類に押印が必要なので買わざるを得ないです。

個人の印鑑と異なり法人の場合、シャチハタとか100均でケースに並んでいる、みたいなことがないため基本的には全てオーダーとなります。(サイズも規定がある)

とはいえ通販でよければ概ね5千円もあれば購入できそうなので仮に5千円としておきます。

最近の会社はともかく、古い会社に勤めたことがあればどこかしら見たことがあると思いますが、法人の印鑑は大きくて、角張ったのとか色々あって個人の印とは全然違いますよね。

 

ちょっと調べた範囲では、どうも印鑑登録する実印と銀行印、請求書とかでよく使われる角印、もっと作業的なこと(郵便物など)に使うゴム印(住所とかがポンポン押せるような、印鑑というよりはスタンプ的なやつ?)の4種類で一揃いのようです。

ただ、実際ほんとうに必要なのは実印くらいで、銀行印は実印をそのまま使えば問題ないので一本でも大丈夫らしい。

 

その他の雑費5千円

なんか肩書きがなくて寂しいので会社を設立したけどその後何も活動をせず、お金の動きがない場合は、義務的に行うべき事は税の申告と納税だけなので他に費用はかかりません。(自分で各種税申告をすることになります)

ただ、銀行口座を開設したり諸々の手続きに証明書や郵送料など事務費はかかると思うのでここでは仮に雑費5千円を計上しておきます。

(本当は会社の体裁を整えるため電話番号を保持したりするのでもっとかかりそうではあるが、まぁなんか既存の個人のものを使うとかで追加料金は不要と想定)

 

なお、他に公的個人認証とそれを扱える機材も必要になってきます。

法人設立前の手続なので個人のマイナンバーカード内に格納された公的個人認証(無料)と、WindowsPCとICカードリーダーなどがあればよさそう。

自分は家にあったPCと110円で買ったジャンクのICカードリーターで対応予定。

こんな感じのやつ。

 

個人的にはFelica対応の非接触型のをおすすめしますが、ちょっと高いんですよね。(2~3千円する)

 

 

最低維持費は法人住民税均等割の7万円/年

利益がなければ国税である「法人税(15%~)」の納税額は出ませんが、地方税である「法人住民税(1.5%~?)」は収支が赤字であっても「均等割」最低7万円/年かかります。これは法人の「人頭税」みたいなものですね。

自然人はいいけど、法人は息するなら税金払えということです。

 

資本金1000万円以下というミニマムな規模で、設立しただけでまったく何も活動しなかったとしても毎年それだけ納付の必要があります。

(パラパラ見た範囲では都内の自治体(市)で5万円と表示している例も見られましたが、それはあくまで法人「市」民税?で、都に納付する2万円が別途必要になり市+都=合計7万円となります)

この資本金1000万円以下という基準はおそらく合同会社がなかった頃の昔からの基準がそのまま変えられていないからだと思いますが、ルールはルールなので資本金1円でも7万円払わなければならないということには変わりありません。

前述の資本金のところで858万円ではなく区切りがいい1000万円でも、、、という話をしたのはこの基準が理由です。(858万円でも1000万円でも毎年の法人住民税均等割の7万円は変わらないため)

 

解散時に8万1千円

一般に法人の登記は何かしら変更するのにだいたい1回3万円かかります(内容によって1万円のものもある)

解散登記も変更の一種で、登記手数料として3万円かかります。

これで解散するはずなのですが、法人の場合は届出しただけで「ハイ終了~!」「おつ~」みたいに勝手に解散することができず、後始末が必要になります。

このとき、後始末をする人(清算人という)を決めてその人を選任したということを、これまた登記します。これにまた9000円。(ひとり社長なので、存命中の解散であれば自分がそのまま清算人になります。)

この清算人の仕事ですが、、、一般的には未払いや未収金の処理などもあるのでしょうが、それらがなかったとしても最低限、取引相手(具体的には債権者)に解散を知らせるための官報公告という手続きが必要。

これは実質取引相手がいなかったとしても必要なんだそうです。

まぁ法人の取引実態など様々で、何か基準があるわけではないので一律のルールでやらなきゃならない手続として定められているってことでしょう。

 

この官報公告、電子データではなく官報という物理的なもの(紙)に対する掲示ということもあって、結構なコストがかかります。

2023.5現在、あくまで目安ですが4万円弱ほどとのことで、ここでは仮に4万円としておきます。

官報に公告を載せるのに39,482円(東京と兵庫の2カ所を見たけど両方同じだった)

 

それが過ぎると最後に、清算が終わったことを示す清算結了登記で2千円。

 

まとめると

解散登記 3万円

清算人登記 9千円

官報公告 4万円

清算結了登記 2千円

で、解散には

合計8万1千円

かかることになります。

 

設立から解散までのトータルコストは22万~

これまでの話をまとめると、お試しで合同会社を設立して1年後には解散とした場合のコストは

設立 7万円

法人住民税 7万円

解散 8.1万円

合計 22.1万円

という感じになります。

 

これが2年後に解散となると

設立 7万円

法人住民税 7万円x2回

解散 8.1円

合計 29.1万円

となります。

 

表にするとこんな感じです。

20年で155万ほど

このうち大半を占めるのは、毎年の法人住民税均等割ですね。

前述の通り黒字だろうが赤字だろうが、存在している限り納税義務が生じます。

 

ただ、設立&解散にも(各1回限りとはいえ)それなりにコストはかかるので、短期の解散だと1年あたりの額も結構な負担になりそうです。

20年ほど運営すると表の右側のほうにいくに従って、各年のコストは法人住民税均等割の額に近づいていきます。

(もちろん20年もあれば手数料の改定などもあるかもしれませんが、そこはよくも悪くもお役所仕事なのであまり考えなくても良さそう。)

 

これらは減価償却費のような会計上のものではなく現実的なキャッシュアウトなので、法人設立に金銭的な意味を見いだすには、少なくともそれ以上の額は法人の事業のなかで利益として生み出す必要があります。(法人の維持を映画を見たりボウリングに行ったりするような消費活動の一つとしてみるなら、ひたすら当初の資本金を食い潰していくという手もあります)

 

短い法人寿命も世間一般では想定内?

今回はあくまで法人の設立と解散の流れとコストを把握する、という目的だったので常識や一般的な状況というのは考慮せず、あくまで制度的にはどうなのか?という観点で検討しました。

しかし、わざわざ法人を設立して運営していくわけなので、一般的には数十年単位で活動するのかな?

・・・などとぼんやり想定していたのですが、税務署の「法人税のあらましと申告の手引」を見ていると、設立から解散の流れの事例で、たった4年で解散してしまう法人が事例(モデルケース)として堂々と掲載されていました。

H29設立でR2には解散(清算)という事例が

こちらも税務署側があくまで制度説明のために作った資料の一つなので、世間一般的なリアリティを考慮しているかはわかりませんが、中盤ニョロニョロみたいな表記で時間経過を表現せず、リアルに4年で解散する図になっている点は多少気になるところです。

 

当然目に見えないコスト、管理運営の手間がかかる

1円法人のところで少し触れましたが、法人の管理運営のためには各種届出書の提出やら税金の申告やらといった面倒な手続きが必要になってきます。

大きく事業をやっている人は大半が税理士に依頼し、小規模でショボショボやっている人も面倒なのでマネーフォワードだとかを活用し(というかアフィサイト化して広告費を稼いでいる)、自分のように

「申告書なんて税務署とか役所のサイトに解説つきで掲示されているんだから自分で書けばいいじゃん」

みたいに思ってる人はほとんどいないようです。(思ってる人はいても面倒だったり苦手だったり技術的に難しかったり効率が悪かったりしてやらない?)

 

ただ、ただねぇ。

自然人の子供であれば食事を与えたりおしめを取り替えたり病院に連れて行ったりという具体的な肉体行動でのケアが必要になってきますが、法人の場合は主に書類仕事がそれに相当するという話なので、設立した者の責任としてやるしかないでしょと思っているんですけど(法人を自分の分身もしくは子供とみなして育てていくイメージ)。