
引き続き、40mm厚スタイロを縦に切ってみようというお話です。
コレまでのお話はこちら。
初回が「通常のカッター+多少の工夫でなんとかならないか」って話で、以降、2回目はオルファの波形カッター刃、3回目は100均のパン切り包丁、4回目が電動パン切りナイフ、、、という感じで試してきたのですが、一長があっても一短がある、という感じだったので、引き続き違うものを試してみましょうという話。
今回は熱で発泡スチロールなどを切断する、ヒートナイフ、ホットナイフ、電熱カッター、電熱ナイフなどと呼ばれるものを使ってみました。(ややこしいので一応ここではヒートナイフと呼ぶことにします)
カッター5 ヒートナイフ(RONGTER? 1万円くらい?)
うちのはこれ↓で、ブランドものではないのですが、箱にはRONGTERと打刻がされています。


amazonで検索しても2025年10月現在はすでに扱いが終了しているらしく、出てこないようです。(買ったのは数年前)
中身はたぶんコレなんかと似たり寄ったりじゃなかろーかと。
写真を見る限り、この製品のほうが刃先の選択肢が多いようです。
うちのRONGTERは先端が長短各1本で、変わった形状のものは選べなかったと記憶しています。(ローコスト版だったのか、あるいは当時はまだそんなバリエーションがなかったのか)
まぁ直線を切るには問題ないので、今回は手元にあるRONGTERを使ってカットしていくことにします。
ちなみに古来?からある熱でスチロール系のカットをする製品というのはこんな感じのやつです。
弓形のやつなんかは、一時は100均でも売られてたようです(もちろん遙かにチープな造り)
小物をカットするのにはこういうのもアリかもしれませんが、今回の自分のような用途(住建の素材を切る)では難しいですね。
思ったほどサクサクは切れない
さっそく実際にカットしてみたのですが・・・うまく切れなくてすぐに断念しました。
なんていうか、熱が思ったより弱いのか、相当ゆっくり進まないとならず、サクサクと切り進まない感じです。
これではまっすぐ切れるか?とか曲がるか?とかの問題に至らない・・・。
単に熱で押し当てていくだけなので、操作する身としても工夫の余地がないというか・・・どうやったらこれで負荷が少なく、かつうまく切れるようになるのか、イメージがわかない感じです。
何かやりようがあればがんばってみようという気にもなるのですが・・・
どうして切れないのかというと、最初はスタイロの融解温度の問題かな?などと考えてみたのですが、170℃前後で融解するスタイロに対して、このナイフは8秒で500℃まで上昇するとされています。
この製品、200Wのパワーがあるのですが、そのすべてがスタイロとの接触面にはいかず、切断における消費熱量はだいぶ少ないのではないかと推測できます。
とすると、根本的にパワー不足なのかな・・・
他の理由としては、また例によってカッター刃の厚みが影響してそう。
・・・と思って測ってみたのですが・・・

思ったほど厚くないですね。
これまで試用してきたものを並べると
通常のカッター刃:0.2~0.3mm
L型カッター刃:0.5mm
100均パン切り包丁:0.8mm
電動パン切り包丁:2.0mm
という感じだったので、ちょうど100均のパン切り包丁並の厚さってことでしょうか。
鋭利な切っ先で物理的に切断する(組織をほとんど破壊せず切り離す)のと、今回のように熱で溶解させて切断する(組織を破壊して切り離す)のとを同列には扱えないのかもしれませんが、、、
結構熱を持つ危ない道具なので、作業中の写真がありません。
残念ながらこれで上手くカットしていける見通しが持てなかったので、諦めて次の方法を探っていく予定・・・
後日談・・・実はこれでもしっかりカットできた!?
写真がまったくないのはさすがにヒドいだろうと、切断面くらいは載せておこうと思ったのですが、残された多数の写真のなかでどれがこの切断面だったか断定ができず・・・(溶けて繊維が潰れているので、なんとなくこれだろうというのはあるけど・・・)
というわけで、もう一度出してきて切断してみるか・・・と思って実験してみたところ、今回は実にサクサクと切断できました。サクサクというかス”ゥーッという感じですね。ジューッとまではいかないけど、スーッというほどでもないってレベル。
初回は全然ダメだったのにどうしてーっ!? という感じだったのですが、、、実はこの製品、温度を調整できるダイヤルがついていて、初回はどうやらMINで切断を図っていたようです(今となっては確認するすべがないけど・・・)

これをMAXにすると、刃先が触れるそばからスタイロが溶けていきスーッと切れる一方、MIN側にするとロクに溶けずに切り進まないことがわかりました。
なんてこったい!
単にちゃんと設定しなかったから切れなかっただけなんかぃ!?
(ただしこの製品、ダイヤルを何回転すれば何ワットになる、MAXが何ワットでMINだと何ワットだ、といった説明はどこにもなかった気がする・・・)

200Wのヒートナイフでの切断事例
で、実際にカットしたのがこちら。

4cm厚で長さ10cmちょっとですが、なんとこれ、たったの1~2秒でカットできました。パワー十分で、まったく引っかかることもありませんでした。
これはいいかも・・・
ヒートナイフで果たして直線をまっすぐ切れるのか・・・
1回目の時に作ったガイドは、直進性を確保するため3辺でアルミのアングルを使っていましたが、アルミは猛烈に熱を伝える(受け取る)ので、ヒートナイフを沿わせるためには使い難いところ。
とりあえずの代替として木材(2x4材)を使いました。

実験なので上下に置いただけでカットしましたが、そこそこ木材に沿ったラインで切れている印象です。
もし長尺にわたって反りの少ない木材が手元にあれば、それをガイドにして1820mmの縦切断もできそうです。
うーん、、、これ、じゅうぶんアリなんじゃないでしょうか。
自分は結局次の方策に手を出してしまって手間がかかってしまったのですが、初回の実験時にこのような切断結果が得られていれば、この方法で進めたかもしれません。
気になった点は独特の切断面ですね。
熱で繊維を完全に潰しているため、全体的にツルツルっぽい表層になっており、それでも潰れずに残った凹部がゴマ粒状に目立っています。

このゴマ粒、黒ずんでいるように見えますが、これは焼け焦げているわけではなく、数が減ったかわりに一つひとつの穴のサイズ(奥行き)が大きくなって、内部が暗くなったものが目視だと黒く見えている、って感じです。
(ただし、切断に手間取って同じ位置で加熱する時間が長くなると、黒焦げてしまう可能性はある?)
ヒートナイフでの長尺スタイロの切断はアリ・・・かも
というわけで、
・独特の切断面が気にならない
・歪みが少ない長尺の木材がある(手に入る)
・それなりにパワーのあるヒートナイフがある(手に入る)
という条件を満たせば、
・ヒートナイフでの長尺スタイロの切断は十分ありでは?
という感じの評価です。(他の用途がない人にはヒートナイフが非常に割高に感じられるかも知れない)
よくプラスチックやゴムであるパターンで、溶けた素材が水ぶくれみたいに端の部分を膨らませることになるのでは?という懸念もあったのですが、試した範囲ではそういうのもありませんでした(膨らむのではなく、内部の細かな気泡が潰れて収縮する感じ?)
なお、結構なボリュームで素材を溶かしているので臭いが強いのと、溶けているぶん多少の捨て切りシロ(溶けシロ)が生じる点は注意が必要そうです。


