AIをガリガリとビジネスに活かしてナントカが爆アゲだー、みたいな気持ちはまったくないのですが、自宅トイレへの手洗器の設置で、給排水の位置をどこにするか考える必要があって、AIを使ってみました。
前回は答えを得て「なんかイイ感じじゃね?」とキモチ良くなった(?)ところまで。
今回は、得た回答のなかで「なんか変だぞ~」と思ったことをふまえ、AIとの付き合い方を考えます。
説明のチグハグさから、説明に因果関係(ロジック)がないことを推測
前回の回答を再掲します。
この回答のなかの説明で気になるのは
・「手洗器の排水口からの高さを考慮」(青下線)と言ってる割に、数字の計算上は手洗器の上部位置からの計測になっている(赤下線)
ってところと、
・ボトルトラップの高さが200-250mm
ってことです。
また、公式情報としてテキストベースでは明示されていない排水口部(すり鉢底部)の厚み(おおむね20mm程度)なども、あたかもないかのように無視されているように見受けられます。
※今さらですが、トラップというのは排水口の途中にあって臭いが逆流しないように水を貯めておく構造のことです。いくつかの形状があり、ボトルトラップというのはボトル型、手洗器の場合はほかにPトラップやSトラップといったものがあります。形状は下の写真を見てください。だいたい手洗いの下に似たようなのがついています。
さて、こぴ君の回答の何がおかしいかというと、、、わかりやすいように今回の回答を図示するとこうなります。
トラップについては質問段階で製品指定をしていないため適当に・・・この例ではこぴ君の200-250mmという説明に沿って、TOTOの高さ228mmのボトルトラップを当てはめてみました。
各数字を見ていくと問題ないように見えますが・・・上のほうがこうなってるんですよね。
上の部分の高さ、位置が機能的に正しくありません。
実際に組み合わせて設置したイメージで重ねてみると、こうなります。
手洗器から管が大きく上に突き出てしまい、かなり前衛芸術的?なイカした構造になってしまっています。
当たり前ですが、この状態で水を流すと配水管には流れず、その脇から水がダダ漏れになります。(あるいは、底部をシールして水がたまるような施工をすれば、器のなかに常時水がたまっている感じになる)
手洗器の上部とボトルトラップの上部とを同じ高さに合わせて設置するというのは、こういうことです。
人間から見ると当たり前におかしなことでも、手洗器が何なのか、ボトルトラップが何なのか、水が流れるとはどういうことなのか、どうやって漏れないようにしているのか、というのを理解していないと、こういう図を見てもおかしいと思えない、ということなのかなと。
おかしなロジックなのに答えが合っていたのは間違いが2つあったから
ところで、おかしいといっても答えが合っていたのはどうしてなのか。
いやその答えが合っていたというのが自分の誤認で、そもそも間違っていたのか? どうなんだい? という話になります。
答えは・・・ほぼ合っていました。
ただ、その原因がねぇ・・・
一つ目は、上の画像にあるとおり手洗器の上部から寸法を計算している点。これで110mmズレてきます。これは明確に誤りでしょう。(手洗器の厚み20mmを考慮すると90mmのズレといえる)
2つ目は、ボトルトラップの高さを200mm-250mmと決め打ちしている点。これは実際にはもっと短くなります(できます)。自分の計算では120mmくらいと仮定していました。
この2点を両方誤りだとすれば、これで+110mm-(80~130mm)で、差し引きほぼゼロになってきます。2つ間違っていても差し引きがゼロになれば答えは合ってしまいます。
こぴ君の手洗器構造への理解度はゼロなのでは?という疑問
回答を再度読んでみると、こぴ君はそもそも手洗器の構造(高さがある、器状であること)を認識できていない可能性があります。
それは
・壁排水の取り出し位置を決めるためには、手洗器の高さとボトルトラップの寸法を考慮する必要があります。
と回答しているものの、そもそも
・ボトルトラップは手洗器の上部ではなく下部に固定するもので、手洗器の高さそのものは壁排水の取り出し位置には関係がない
からです。
(こぴ君に「手洗器の高さと壁排水の取り出し位置とは関係がないと思うのだが、どういう関係があるのか?」と問い詰めてみればよかったかもしれない)
今回は、ボトルトラップの実際の高さと、寸法の計測開始位置の両方が誤っていることでプラマイゼロ、差し引きゼロみたいな感じで正しい答えにはなっているような状態ですが、説明には説得力や納得感がゼロです。
ボトルトラップの高さは各社各製品ごとにバラバラだし調整が可能
次にボトルトラップについて少し見ていくと・・・
まず、一般的なボトルトラップそのものの高さ(排水口までの距離)は実際のところ200-250mmもないんですよね。
今回、上画像で事例に挙げたTOTOのボトルトラップはやや大きめのやつで、確かに図面上228mmまでの長さになっていて、こぴ君のいう200-250mmに合致しています。ただ、多くは各社のサイトを見るとざっくり「~150mm」とか「~180mm」程度だったように思います。
(もっとも、質問の際に前提として挙げた「同社の適合するボトルトラップ」を「カクダイ 494-121-32」とすれば、これは246-321mmと遙かに長いので「一般的に・・・」と言うのは難しいのかもしれない)
2つ目はその「~」という点で、これは差し込み深さでざっくり50~100mm程度の調整ができる仕組みになっているということを意味します。
228mmも、実際は取付の際にもっと短くできます(たぶん)。
ということは、こぴ君はボトルトラップの取り付け作業、施工についてまったく考慮できていない(知らない)、という可能性があります。
3つ目として、ボトルトラップは垂れ下がり部(排水口より下にきて水を貯める部分)もあるため、本来の特徴「目立たずトラップする」ということを考えると、排水口の位置はやや高めにすべき、という話になりそうです。
これは回答の間違いではありませんが、最初に「ベターな位置を提案できるか?」と聞いたときに「アドバイスはお任せください」「アドバイスができます」と勢い込んで回答してくれた割に何の考え(方針など)もないようでショボいなというのが・・・
上で見たとおり手洗器の構造を認識、理解できていないというだけではなく、このようのボトルトラップ自体も理解できていないのではないか、という疑念が生じてきます。
AIの正しい答えと誤ったロジック、もとめる答えを考えてみた
というわけで、まず
・一般的なボトルトラップは200-250mmで手洗器の上部からその長さを当てはめるとFLから660-710mmの高さに排水口を設置すべき
という回答は、筋としてはワケのわからない話だなー? となってしまい、「こぴ君、信用していいものかなー?」という認識に。
自分なりに答えを考えてみたので、先にその内容を書いておくと
・一般的なボトルトラップの排水目皿から排水口までの高さは150-250mm程度とされているが、もっと短いものや、調整できる製品が多い
・ボトルトラップを目立たなくするためには、短くするほうがベター
・排水目皿を含む手洗器の厚みを20mm、カウンター厚さ20mmの合計40mmを考慮しボトルトラップの高さを150mmとすれば、カウンター下部から排水口(中央)までの距離は150-40=110mm、排水口からFLまでの高さは670mm(780-110=670)となる
・ボトルトラップの具体的な製品が決定したら、そのサイズにあわせて再計算すべし
といった回答が適切なのかな? という感じです。
さらに、「アドバイスできます」と豪語するのであれば
・世の中にはこういう工夫をして設置の自由度を高めている事例がある
・このような製品を選ぶと施工の際に柔軟性が持てる
・メーカー公式ではないが組み合わせできる他社製品としてコレとコレがある
といった回答が付加されていれば、わざわざ文章を作って聞いてみた価値があったなーと思えるのですが。
こぴ君は回答とロジックを別々に集めてゴッチャにして提示してくれるだけ
これらのことを総合して考えると、AI(少なくともこぴ君)というのは
1.答えを集めてくる(集合知を是として?)
2.説明っぽくするため答えに適合するロジックを集めてくる
3.1と2を組み合わせてそれらしい回答を作る
という行動をしているように思えます。
もちろん、すべてが適当ではなくコンピュータの得意な数値計算やその検証はしていて、あからさまにおかしなものは出してこない、というのはあるのかもしれません。
が、今の段階では中身を理解しているわけではないため、今回のように計測開始位置がどこなのか、それはなぜなのか、という点までは考慮できない、という感じになってしまうのかなと。
(将来的には手洗器の汚水の性質、それに影響を与える重力や抵抗といった概念を認識し、ゴムや金属といった素材の違いを理解し、「何年くらい水が漏れないような構造をつくれるのか」「設置場所の緯度経度や気候予測から寿命を推測し、素材のコストやDIYユーザーの施工能力を考慮」して、どうすればいいか回答してくれる・・・といいなぁ)
何にしても、本来であれば2.のロジックを組み立てて1.の答えを導き出すはずなのですが、そういうことができているとは思えません。
仮にネットに転がっている有象無象の情報の選別、あるいはごった煮だとすれば、こぴ君の回答は
・一見積み上げられたロジックに基づく結果のように見えるけど、床に散らかった有象無象を一箇所に集めて山積みし、その上によそから持ってきたアプリオリな答えをポンと載せた、砂上の楼閣に近いもの
って感じがするなぁ、というのが今回の試行の結論です。
願望というかイメージとしては
・構造計算された建築物や、強度計算に基づいて設計された脚立などのようなものであってほしいがそうではない
ということかと。
下世話な言い方をすれば、ある意味「今のAI=コタツ記事自動生成器」みたいなものかな? というのがざっくりした感想です。
(説得力を持たせるため、あたかもロジックがあるように見せかけているだけだとすれば、悪質とすら言えるかも知れない・・・)
とはいえ一方で、以前試したはてなのAIタイトル自動生成機能に比べればだいぶマシかなというのはあります。
「多くの手洗いカウンターが700mm台である理由」のように、少なくとも「一般的にこうなっている」「それはなぜか」といった、
・検索エンジンのまとめ記事代替としては非常に役立つ
という感じはします。
こうなってくると従来型の単語式の検索エンジンは早晩厳しくなりそうな感じがします。そういうので商売をしている人たちにとっては驚異で、焦る気持ちはわかります。
ふと思った「すこしふしぎ」的な可能性
これは与太話ですが・・・今回のこぴ君の回答って、、、あるいは、、、もしかすると
・適切とされる排水口の位置と一般的なボトルトラップのサイズとが計算上合致しない
・理由がわからない(施工や調整を知らないから)
・しかし問い合わせには答えなくてはならない
・関係あるかわからないけど、手洗器の高さとやらを考慮すれば数字上は合致する
・よくわからないけど、それで説明しておくか
みたいな、極めて人間的な対応だったのかもしれません。
仮にこの通りだとすれば、実にSFチックな感じでちょっとトキメいたりしてしまいそうです。